WinActor®導入事例【ナカシャクリエイテブ株式会社】RPAで業務効率化に成功し、人には成し得なかった「神様工数」を実現
自社での経験を活かし、RPA導入支援ビジネスを展開
電力、ガス、通信、鉄道、道路、航空などのインフラ事業や文化財事業を、システム開発から現場支援まで、多岐にわたる領域で支援しているナカシャクリエイテブ様(以下、ナカシャ)。かねてより社内の業務効率化を実践してきたが、2016年、さらなる効果を求めてRPA(ロボットによる業務の自動化)の導入を決定した。同社の理念に沿ったRPAツールとして採用されたのがWinActor®だ。テストケースとして運用している部門では、大幅なコスト削減・作業時間短縮が現実のものとなった。ナカシャクリエイテブはこの実績を活かし、全社でのRPA活用と同時に、RPA導入サポートビジネスも展開している。今回は、代表取締役社長 山口 寛 氏にお話を伺った。
残業時間ゼロを目指すために、人の限界を超えられるRPAを検討
ナカシャは、社内のあらゆる無駄を排除し、経営効率の向上を推進するため、旧来よりトヨタ生産方式(TOYOTA Production System)をベースに、独自の要素を盛り込んだNPS(Nakasha Profit System)をつくり、実践してきた。その取り組みは2005年から毎年、思想や具体的な効率化案をまとめた「NPSハンドブック」を更新し、全社員に配布するほど徹底している。だが部署によっては業務量の多さに対応しきれず人海戦術で乗り切るしか方法がなかったと、ナカシャの代表取締役社長である山口寛氏は説明する。
山口氏 : ますます深刻化する残業時間の問題は、企業として真摯に受け止めなければなりません。11年間のNPS活動で培った“チエ“ と“チカラ“と“チームワーク“を武器に、59期(平成28年9月~)は残業ゼロを達成させるという目標を立てました。
そのための取り組みとして同社では、時間やコストのロスを生み出している作業、つまり人がミスを起こしやすい作業を“見える化“する「全社一斉総点検」を行った。総点検ではまず、主要業務の全工程、全作業を洗い出して「表準化(おもてのひょうじゅんか:現状の作業方法・手順をそのままリストアップし、表にまとめる)」し、ミスの原因となっている工程を特定。続いてパレート図 でミスの傾向とそれによるロスを分析し、無駄を“見える化“していった。そのうえで各部門が自主現場研究会を実施。問題となっている作業の工程・工数の見直しを行った。同社で定める「神様工数(全く無駄のない論理的な理想工数)」を目標に改善を進める中、RPAが効率化実現のための選択肢として検討されるようになった。
RPAは人がPCで行っている作業を、そのまま自動化する技術だ。人は「Excelから特定の部分をコピーしてWordにペースト、それをメールで送信」という作業を難なくこなせるが、従来のICTでこれを自動化しようとすれば、各ソフトを連携させるためのシステムを開発しなければならなかった。しかしRPAツールは、あたかも人がPCで作業するのと同じように、複数のアプリケーションを使い分けて作業を代行してくれるため、人の工数をゼロに等しくできる。
山口氏 : 当社が扱う仕事の中には、資料作成のように定型作業の繰り返しを伴うものが沢山あります。そうした単純作業は、人間がやるよりも機械に任せたほうが時間短縮と精度向上につながると考えました。
作業進行時に異常があれば対応できる「自働化」を実現できることが大きな選定理由
最近では日本国内でも多くのRPAツールが提供されているが、ナカシャがWinActorを選んだ理由はどこにあるのだろうか。
山口氏 : ひとつには“ポカヨケ“ができる仕組みを持っていたことです。NPSにおいて機械による自動化はにんべんの付いた『自働化』でなくてはなりません。つまり機械の動きに異常があった時には作業を停止し、不良を出さないことが条件です。WinActorには、人が監視していなくても、自ら不測の事態に対応する仕組みがありました。
ここでWinActorによる作業自動化の概要を説明しておこう。まずWinActorとExcel、Word、メールソフトなど、自動化したい作業に利用するアプリケーションをPCにインストールし、必要なファイルはHDDに保存しておく。次にWinActorを起動、「録画」モードにしたうえで、実際に人間が作業をやってみせる。するとWinActorは作業手順を記録し、フローチャートに仕立てていく。一通りの作業が終わったらフローチャートを保存、これをドラフトとして、作業の繰り返しや条件分岐を細かく設定し、最終的なシナリオを完成させる。シナリオ完成後はそれをWinActorで実行することで、すべての作業を高速かつミスなく完了させることができるという仕組みだ。
ナカシャが重視していた“ポカヨケ“も、シナリオ設定で実現できる。WinActorが処理中のデータに何らかの異常を見つけたら、「そこで作業を中断」あるいは「そのデータをスキップして、次のデータから作業を続行」するなど、対応方法を設定しておけばいいのだ。
山口氏 : 異常が発生した時のスクリーンショットを、特定のフォルダに保存するといったシナリオをつくることもできます。こうしておけば全体の作業は止まることがありません。後で人間がスクリーンショットを見れば、どこでどんなエラーが発生したかを簡単に知ることができます。ここまで造り込むことで初めて自動化から『自働化』になります。。
シナリオがワンステップごとにモジュール化され、組み替えや転用性に優れていることも、ナカシャがWinActorに感じた魅力だったという。
山口氏 : 工程をすぐに修正することができますし、シナリオを社内で共有すれば、類似した定型作業をRPA化する際の効率化も図れます。
- 独自の業務効率化策を講じていたが、慢性的な残業問題を抱える部門もあった
- 繰り返し作業の伴う定型業務が多いが、手動での効率化には限界を感じていた
- 機械による「自動化」では、“ポカヨケ“ができないのではないかという不安があった
事前の業務洗い出しが功を奏しスムースな導入が実現
一般的にWinActor導入時には、社内の業務を棚卸しし、どの作業にRPAを用いるかを入念に検討しなければならない。しかしナカシャの場合、すでに「全社一斉総点検」で業務の見える化を実施していたため、RPAを活用する業務は比較的すぐに決まった。全社導入前のパイロットケースとしてRPA化することになったのは、電力部で行っていた「工事関連情報を専用システムへ登録 」という作業である。複数のエクセルシートを参照しながら、約60項目の情報をWeb上の専用システムへ入力、またJPEGやPDFといった複数の画像データの添付、全ての作業結果を目視で検査し登録するというのが一連の流れだ。人が文字入力や画像添付をする事で少なからず誤入力や添付間違いというミスも発生していた。
これをWinActorで自働化するにあたっては、(1)全社NPS推進部門であるNPS経営推進部と電力部が要件定義と工程を設計 (2)NPS経営推進部が工程設計に準じ、WinActorのシナリオを作成 (3)シナリオを電力部と品質管理室でチェック (4)最終的に現場導入・運用、という手順がとられた。複数の部署がシナリオ作成に携わることで、これまでNPS活動で培ってきたノウハウが集約され、また客観的な視点からのチェックも行えたという。運用はWinActorの導入が決定し、プロジェクトチームが結成されてから、わずか3ヶ月でスタートした。
時短とミスロスゼロに成功、今後は全社展開・新事業展開へ
パイロットケースでの効果は、すぐに数字になって表れた。年間に換算すると人的な作業時間は682時間以上、45%の削減につながった。新規受託業務にも活用することにより、さらなる大きな効果となるだろう。この結果を受けて、ナカシャは社内にRPA推進チームを立ち上げた。今後は全社にWinActor導入を進めていく計画だという。
- 導入部署では、680時間以上の作業時間が短縮
- ミスや、ミスによって生じていたロスがゼロになった
- 作業進行時に異常があればそれに即した対応がとれる「自働化」が実現した
社内のみならず、WinActorによるRPAを広く普及させていくビジネスにもナカシャは着手した。本社内に開設した「業務効率化推進チーム」では専任のRPA営業担当がRPA導入に関する相談やWinActorのシナリオ作成支援サービスも展開している。
その意義について、山口氏はこう語る。
山口氏 : このサービスを通して様々なお客様と共にRPA化を促進し、社会的な課題となっている労働環境の改善に役立っていきたいと考えています。
ナカシャの「業務効率化推進チーム」では、WinActor導入をはじめ、工程の見える化支援、シナリオ作成までワンストップによる導入相談も受け付けている。
超高齢化や人口減少が進んでいくこれからの日本において、WinActorのようなRPAツールや、その活用をサポートするナカシャのような存在は、人間を単純な「作業」から解放し、より創造性・生産性の高い「仕事」に取り組める労働環境を築いていくために、必要不可欠となっていくに違いない。
会社概要
社名 | ナカシャクリエイテブ株式会社 |
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所在地 | 名古屋市天白区野並二丁目213番地 |
設立 | 1960年1月(名古屋マイクロ写真研究所) |
事業概要 | GIS(地理情報システム)を活用した調査・設計、ITシステム開発、画像処理を自社の商品・技術領域とし、施設管理支援、情報管理支援、文化財の3つの市場・顧客領域で事業を展開。企業活動を通して「ライフラインの維持と文化の育成」を目指し、鉄道、道路、航空宇宙、電力・通信、ガス、文化財の6分野で、各事業者の業務効率化や利益向上を支援すると共に、それぞれの顧客(エンドユーザー)の満足度向上にも力を注いでいる。 |
Webサイト | http://www.nakasha.co.jp/ |