深谷市|ワーキンググループを通じたRPA推進を展開、全職員がデジタル技術を活用できる将来を目指す
深谷ねぎやユリの名産地であり、近代日本経済の父と言われる渋沢栄一や武蔵武士の鏡畠山重忠の生まれ故郷としても知られる埼玉県深谷市。市民約15万人の生活を支える深谷市役所では、行政サービスの向上、業務の効率化などを図るためICT推進室を設け、積極的にデジタル化に取り組まれています。2019年10月からWinActorを導入し、全職員がRPAをはじめとするデジタル技術を活用できるようになることを目指しRPAの推進に取り組まれています。
・市民向け窓口における証明発行業務
・非常勤職員の出勤簿エラーチェック
・人口統計処理
・国保税更生通知発送業務
・自立支援医療支給決定事務 など多数
・シナリオは原則として現場の職員(RPA担当者)が作成
・RPA担当者が技術や情報を共有できるワーキンググループを設置
・ワーキンググループのメンバーが、自部署あるいは異動先でRPAの活用推進に貢献
まずは各課からRPA担当者を選出、WinActorを体感してもらう
「ICT推進室の前身は情報システム課で、どちらかというとシステム管理の色が強い部署だったのですが、もっと政策的な面にも力を入れようと、2019年に組織を変更しました。現在、情報システム係とICT推進係、あわせて8名が所属しており、ICT推進係はRPAやAI-OCRなどの導入、オンライン申請の仕組みづくりやDX推進などに携わっています」と、ICT推進係長 稲村 直之氏は説明します。
RPAの導入にあたっては、複数のRPA製品を比較し、プログラミングの知識のない職員にも使えること、メニューなどが日本語表記で見やすいことからWinActorを選定、2ヶ月間のトライアルで効果を検証して、2019年10月に導入を決定しました。
それと同時に6つの課からRPA担当者を選出してもらい、操作方法やシナリオ作成研修を実施しました。当時ICT推進室の室長補佐だった小島 拓也氏は、次のように振り返ります。
「トライアルを始める前、全庁にRPAとは何かを説明し、RPA導入を希望する業務があるかアンケートを取っていました。希望があった中から市民課、保険年金課、市民税課など6課を選び、そこに所属する『この人ならデジタルに強そう』という人に声をかけたんです。ほとんど一本釣りでした」
担当者は操作研修から1ヶ月の間、各課の業務で使うことを前提として、シナリオの作成に取り組みました。
「人口統計処理の自動化シナリオ」(市民課)も、そこで生まれた一つです。従来、職員が毎朝、システムを操作して行っていた作業をWinActorで自動化するというものです。システムの画面遷移に時間がかかることがあるため、待ち時間も含めて数十分かかっていた作業でしたが、人が殆ど介入しなくても完了するようになりました。
トライアル期間内ではシナリオの完成にまでは至らなかったケースもありましたが、WinActorに何ができるか、どういう使用感なのかを分かる職員が増えたことは、ひとつの効果だったといいます。
ワーキンググループを設置したことで、草の根的なRPA推進が可能に
とは言え当時は、まだRPAが具体的にどういうものなのか、全庁的な理解が得られているとは言い難い状況でした。各課から継続的に担当者を出してもらい、RPAを浸透させていくには明確な枠組みづくりが必要だと考えたICT推進室では、翌2020年2月から各課から推薦されたメンバーで構成する「深谷市RPA推進ワーキンググループ」を設置しました。
「メンバーは毎年各課の所属長から推薦されますが、殆どのメンバーが継続して参加してくれています。また異動先でRPA化できる業務を見つけ、ワーキンググループに戻ってくる例もあります。中には3つの課を渡り歩きながら、参加されるメンバーもいるんですよ」(小島氏)
ワーキンググループは、このように草の根的なRPA推進活動に役立っているだけでなく、RPA担当者のコミュニケーションの場にもなっていると、ICT推進室 主任の冨田 佐知子氏は言います。
「部署によっては、シナリオ作成が、孤独な作業になってしまう場面もありました。自分の課のために懸命にRPAに取り組んでいるメンバーにとって、ワーキンググループという仲間の存在は大きいと思います」
ワーキンググループの活動メンバーが集まる会議は2ヶ月に1回実施されています。会議では、各課のメンバーが取り組んでいるシナリオの進捗報告、作成時の悩みやその解決方法などの発表と情報交換、さらに同市のRPAの運用を支援しているAGS株式会社から、操作のコツを解説してもらう“ミニ研修”など、情報や技術の共有を目的とした内容になっています。また、希望するメンバーがAGS担当者に、個別に技術相談やアドバイスを受ける時間も割り当てられています。
メディアでも話題になった「書かない窓口」シナリオも誕生
ワーキンググループのメンバーにより様々なシナリオが作成され、メディアでも話題になった「書かない窓口」を実現するシナリオもその一つです。これは来庁した市民から求められる各種証明書発行業務を自動化したものです。従来は市民自身が様々な書式の申請書から該当するものを選び、記入して窓口に提出するというプロセスが必要でしたが、このシナリオでは、職員が市民から氏名・住所と申請内容を聞き取って、窓口業務支援システムに入力すると、WinActorが基幹システムにアクセスして、申請内容に沿った書類を作成・発行してくれます。
年間約77,000件の証明書発行を自動化したことで、市民にとっては帳票記載の手間や待ち時間が減り、また市民課の職員にとっては業務負荷が軽減されるというメリットが得られています。「書かない窓口」自体は他市でも実現されていましたが、RPAで基幹システムとを連携させたのは深谷市が初のことでした。
またある課では、非常勤職員の勤務整理を自動化するシナリオを完成させました。一度に大量の勤務整理簿を処理するのですが、勤務形態や職種が何通りもあるため、非常勤職員それぞれがExcel形式で提出してくる勤務整理簿のデータ(勤務時間、休憩時間、交通費など)を自動でチェックし、システム入力用フォーマットにまとめあげるというものです。従来は担当職員3~4人が一週間くらいかけて手作業で行っていた作業が、RPAを導入したことにより数日で終わるようになりました。このシナリオは現在、同様の作業を抱えている他の課でも利用されているとのことです。
WinActorを身近に感じてもらい、全庁展開へつなげる
ワーキンググループが年に1度行う活用事例発表会(動画で全庁に公開)や「書かない窓口」のような事例を通じて、RPAに関心を持つ所属は次第に増えてきました。2022年現在、ワーキンググループには13課から30人のメンバーが集まっており、庁内で稼働中のシナリオも70本近くになっています。
「この3月に庁内の基幹系PCを約220台のPCを入れ替えたのですが、そのすべてのデスクトップ画面にWinActorのアイコンを置きました。職員がRPAを知るきっかけを作るなど工夫をしながらRPAの推進に取り組んでいます。また今年から人事研修の一環として、AGS株式会社のサポートの下、入庁2年目の職員を対象にRPA研修を実施しました。こうした取り組みを通して、全職員が当たり前にWinActorをはじめとするデジタル技術を利活用できるようにすることを目指しています」(冨田氏)
「近隣の自治体でもWinActorを利用しているところがあるようですから、そういうところとシナリオや技術、情報の共有を行えると、さらなる行政サービスの向上、職員の負荷軽減につながるのではないかと思っています」(小島氏)
小島氏が言うように、WinActorというツールを通して複数の自治体・所属が業務課題を共有し、その改善に力を合わせられるようになれば、さらに暮らしやすい社会が実現するかもしれません。
深谷市役所 概要
会社名 |
深谷市役所 |
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本社所在地 |
埼玉県深谷市仲町11番1号 |
人口 |
140,258人(2022年7月現在) |
ウェブサイト |
http://www.city.fukaya.saitama.jp/ |
WinActor販売特約店
会社名(商号) |
AGS株式会社 |
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本社所在地 |
埼玉県さいたま市浦和区針ヶ谷4丁目3番25号 |
事業内容 |
情報処理サービス、ソフトウェア開発、その他情報サービス、システム機器販売 |
コーポレートサイト |
https://www.ags.co.jp/ |
取扱商品 |
WinActor/WinDirector/DX Suite/スマート自治体プラットフォームNaNaTsu/Prexifort-OCR |
RPAソリューションのお問い合わせ先 |
AGS株式会社 営業統括部 |
(2022年8月現在)