RPA開発をする際には、RPAシナリオというものを作成することになります。RPAシナリオがいわばRPA導入の核であり、一連の業務フローを自動化します。本記事では、RPAシナリオの作成方法や例、設計書の作成方法などについてご説明します。
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RPAシナリオとは?
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RPAシナリオとは、RPAに指示を出すための業務フローの設計図のことです。RPAは、さまざまなソフトウェアにまたがって行う一連の業務を自動化できるツールですが、その対象となる一連の業務フローを設計しなければなりません。
例えば、Excelでデータ集計した後でそれらのデータを加工してデータベースに格納し、そのデータから帳票を作成して出力、最後にメールで関係者に送付する、といったような一連の業務フローを設計したものが、RPAシナリオです。
RPAシナリオには、プログラミングをしてシナリオ作成する場合と、実際の業務を行うことでシナリオ作成する場合の、2パターンの作り方があります。RPAシナリオ作成にプログラミングは必ずしも必要ではありません。
RPAシナリオ(WinActor)の例・サンプル、作り方のイメージ
RPAツール「WinActor」でのサンプルシナリオをご紹介します。
「Excelの連続するシートのデータを1シートにまとめるサンプルシナリオ」「複数のCSV・Excelファイルを1つのCSVファイルにまとめるサンプルシナリオ」などは、さまざまなシート・ファイルに散らばっているデータを1シート・ファイルに集計するサンプルシナリオです。この例のように、複数のファイルに散らばっているデータを、RPAツールを用いれば集計することができます。
また、Excelなどに格納されているデータを、データベースに登録したり出力したりなどするRPAシナリオを作成することも多いです。「Accessの在庫管理テーブルでSQL実行を行うサンプルシナリオ」では、入庫データを在庫管理テーブルに登録し、最後に在庫テーブルのデータをExcelに出力しています。
さらに、「Excelの勤怠表で指定の有給取得日数をカウントし、WinActorノートの差し込み機能で案内文を作成するサンプルシナリオ」を利用すれば、年間の有給取得日数が不足している従業員へのメール送信を自動化することができます。
RPAシナリオ作成費用
RPAシナリオの作成費用について、「WinActor」の例を出してご説明します。
まず、「WinActor」ライセンスの「フル機能版(ノードロック)」の標準小売価格は908,000円/年、「実行版(ノードロック)」で248,000円/年です。スモールスタートしたい方でも、「フル機能版(ノードロック)」1台から始められることをおすすめします。
その後にRPAシナリオ作成と保守・運用の費用がかかります。自社でそれら2つのプロセスをこなせれば費用はかかりませんが、外注すればまた費用がかかります。それらの費用もあわせて、RPA導入の費用を考えなければなりません。
RPAシナリオ(設計書)作成のステップ
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RPAシナリオの成果物や、費用などについてわかったところで、実際のRPAシナリオの設計プロセスも気になるのではないでしょうか。そこで以下、RPAシナリオを設計するプロセスについてお伝えします。
RPAシナリオの目的を明確にする
はじめに実施しなければならないのは、RPAシナリオ作成の目的を明確にすることです。RPAシナリオをどのような業務に活用したいのか、それを導入することでどのような効果をあげたいのかを明確にしましょう。
そうすることで、費用対効果を測ったり、その後のあるべき業務フローを考えやすくしたりするためです。RPAシナリオを導入したところで、本業の業務効率化に貢献しなければ、導入コスト分無駄になってしまいます。
現在の業務フローを可視化する
次にやらなければならないのは、現在の業務フローを可視化することです。現在の業務フローを整理して可視化することで、既存の業務にどのような非効率性があるか、どこを変革できそうなのか判断できるようにします。人力で作業をしている場合などは業務フローがブラックボックス化していることもあるので、誰にでもわかるように可視化する必要があります。
業務フローの残すべき部分とそうでない部分、人力でやる部分とそうでない部分を見極めるためにも、重要なプロセスです。
RPAシナリオの設計書を作成する
既存の業務フローについての整理ができれば、RPAシナリオの目的や既存の業務フローなどを見ながら、あるべき業務フローを考えます。そして、新しい全体の業務フローと、RPAシナリオが担う業務フローの2パターンについて、RPAシナリオの設計書を作成します。
実際にRPAシナリオを作成する前に、最終的にどのような業務フローを作るのかの設計書を作成することで、滞りなくRPAシナリオの作成を行うことができます。
ノードを並べてRPAシナリオを作る
RPAシナリオの設計書を作成できたら、次はいよいよノードを並べて、RPAシナリオを作成します。
ノードとは処理の単位のことです。「エクセルを開く」「特定の値を特定のセルに入力する」などのそれぞれの単位のことを指しています。それらの処理をPCで実践して、実際にRPAシナリオを作ります。
人が無意識にやっている非定型的な判断を排除することがポイントです。
RPAシナリオをテストする
RPAシナリオが作成できたら、次はそのRPAをリリースするために、動作に問題がないかテストを重ねます。まず、1つのPCだけで問題がないかや、実際のデータを入れてみて複数のソフトウェアを作動させて問題がないかなど、さまざまな視点からテストを実施する必要があります。
テストを重ねて、エラーの水準が一定レベル以下になってから初めてリリースできます。社内にITに強い方がいない場合などには、テスト方法についても、知識・ノウハウを体型的に勉強してからRPA導入に臨んだ方が良いでしょう。
RPAシナリオは導入後にも管理が必要
RPAシナリオは、一度導入して終わり、という性質のものではありません。実は、RPA導入後も、RPAシナリオを管理し続けていくことが必要です。
そもそも、ビジネスにおける業務プロセスは、ビジネス環境の変化によって変わる可能性があります。また、運用していく中でエラーなどが発生する際に対応する必要もあるため、それらに対応できる保守・運用体制をあらかじめセッティングしておかなければなりません。
RPAシナリオのバージョン管理や、見直し体制などについては導入前からあらかじめ決めておく必要があります。RPAシナリオの保守・運用については専門的な知識が必要なため、「RPA技術者検定」資格試験などで勉強されると良いでしょう。
RPAシナリオは重要
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以上、RPAシナリオの概要や例(サンプル)、設計方法などについてご説明しました。
RPAシナリオとは、RPAで自動化する一連の業務フローのシナリオのことです。RPAシナリオの作成方法には、画面操作を記録して行う方法と、プログラミングをして作成する方法の2通りあります。
RPAシナリオは、さまざまなソフトウェアでの動作を組み合わせた動きが実現可能です。例えば、ExcelやAccess、ブラウザやメールソフトなど、さまざまなソフトウェアを連携させることができます。
RPA導入時には、あるべき業務フローの構想や、RPAシナリオの実装、テストなどのプロセスがあり、その後も保守・運用し続ける必要があります。これらのプロセスには専門的な知識も必要なので、「RPA技術者検定」などで体系的に知識を学ばれるのがおすすめです。
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