各社総務部有志による「RPA勉強会」開催 ― 12社から36名が集まり、社内での推進方法や、開発のテクニックなどを語り合う
企業で「WinActor」の導入や運用に携わっている有志の人々が、「RPA勉強会」を開催している。2019年にはその第2回目が行われる ―― その情報が、「勉強会」参加者の一人であるベネッセビジネスメイトの野口悦子氏からもたらされたのは、2018年12月。主催がNTTデータでも特約店でもなく、有志のユーザーであること、しかも既に2回目だということに強い感銘と関心を持ち、急遽、当社RPAソリューション担当もオブザーバーとして参加させていただくことにした。
(全体会では、各社からの近況報告と新メンバー紹介が行われた)
共通の課題を持つ、複数企業の担当者が発足した「勉強会」
「勉強会」は1月18日午後、東京・お台場の乃村工藝社・本社ビルのノムラホールにて開催された。大阪で開催された2018年10月の第1回から継続参加している7社に、今回7社加わり、14社から36名が集まった。
この「勉強会」が起ち上げられたのは、2017年の「シェアードサービス研究交流会議」(主催:一般社団法人 企業研究会)がきっかけだったという。交流会議では参加者がいくつかのグループを組んで、それぞれが設定したテーマを1年にわたって研究するという形式のものだった。「勉強会」の発足メンバーは、その交流会議の中で「総務部門でのRPA導入研究」をテーマにしたグループの面々が中心となっている。発足メンバーの一人であり、今回の幹事企業である乃村工藝社グループ 株式会社シーズ・スリーの企画管理室 室長、岩楯義史氏は当時を振り返って、こう説明する。
岩楯氏: 2017年頃、RPAは人事系、経理系での活用は始まっていましたが、総務部門の業務では活用されることはあまりなく、これは研究のテーマになると考えました。チームでRPAを研究していくうち、「導入してみたものの、なかなか知見がつかめない」「いつまでもコンサル任せではいられない」など、各社共通の悩みがあることが分かってきたので、交流会議終了後も定期的に集まって、悩みや問題を話し合う場がほしいと思うようになりました。それを具体化したのが、この「勉強会」です。(今回の幹事企業、シーズ・スリーの岩楯義史氏)
第1回目の参加者は20名強だったが、今回はNTTデータや技術者派遣を行う関係企業にも声を掛け、36名にまで拡大したとのこと。ベネッセビジネスメイトの野口氏は「勉強会」を情報共有の場としてだけでなく、担当者のモチベーション向上につながるものにしていきたいと考えているという。
野口氏: 日々の業務に追われてしまうことが多い中、こういう機会を刺激にして、「もっと頑張ろう」と思うきっかけにしてもらいたいと考えています。
(今回の情報を提供してくださった、ベネッセビジネスメイトの野口悦子氏)
(お二方に話を伺ったのは、シーズ・スリーが属する乃村工藝社・本社ビルの「リセットスペース」。社員のコミュニケーションを活性化し、知識や経験を共有することで、社内のリソースを最大限に活用する場所として、2018年にオープンした。)
推進チーム、開発チームの分科会で、活発な情報交換
初参加の人々のための「名刺交換タイム」後、「勉強会」は各社からの近況報告で幕を開けた。「WinActor」の運用開始から2~3か月という企業が多かったが、既に10以上のシナリオを開発し、大幅な工数削減を成功させている企業も見受けられた。中には開発スタッフの確保にあたって、就労移行支援機関(障がいを持つ方の就職をサポートする組織)の紹介で、シナリオ開発専任者を採用されたという企業もあった。当日は支援機関からご担当も参加されており、IT分野で活躍される方が増えていることを紹介していた。
続いて「勉強会」は、推進チーム・開発チームに分かれての分科会に移った。岩楯氏によれば、より効率的・積極的に情報交換や討論ができるよう、今回から分科会の形式を採ることにしたとのことだ。殆どの企業から推進・開発それぞれの担当者が来場しており、情報を余すことなく持ち帰ろうという意気込みが感じられた。
推進チームの分科会では、各参加者から「社内にRPAをいかに浸透させていくべきか」「どのような研修が効果的か」「RPA推進の窓口として、どのように業務の可視化を行ったり、削減工数の見込みを立てたりすべきか」といった疑問・課題が俎上に載せられ、他の参加者が対応策やアイディアを語るという形式で進んでいった。
一方、開発チームは、シーズ・スリーが業務効率化のために開発中の「売り上げ申請ロボット」のシナリオを例にしながら、高速性・安定性を得るための工夫やテクニックについて紹介していった。途中、参加していたNTTデータの開発エンジニアが、より効果的なシナリオをつくるためのアドバイスをさしあげるという一幕もあった。
(事例シナリオを参考に、開発手法を学ぶ開発チーム)
「ぶっちゃけたところを話してくれるので、とても役に立ちます」
約2時間にわたって行われた分科会の終了後、数名の参加者に感想を伺ってみた。
「普段は他の会社から情報を聞ける機会が少ないのですが、ここでは皆さん“ぶっちゃけた”ところを話してくれるので、とても役に立ちます。今後、より参加企業が増えて、沢山の企業と情報を共有できるようになればいいと思います」(小林製薬 小田桐氏)
「NTTデータのエンジニアさんから直接アドバイスをいただけて、とても役に立ちました。参加各社の方々とは、今後も勉強会を通じて長くお付き合いしていければと思います」(シーズ・スリー 松平 整志氏)
「分科会にしてもらえたのは、とても良かったですね。弊社が幹事を務めることになった時にも、今回に倣っていきたいと考えています」(ダイハツビジネスサポートセンター 石原 貴子氏)
開発分科会に参加させていただいた、当社エンジニアにも収穫があったようだ。
「WinActorを使い慣れてしまうと、使いにくいところがあっても“仕様”と認識してしまいがちです。今日はユーザー様の視点から、どこが使いにくいと思われているのかを知ることができました。そうした点は開発元にフィードバックして、製品改善に役立てていきたいと思います」(NTTデータ 大日向 江美)
勉強会は、企業は違えども同じソリューションを扱っているという共感で生まれる和気あいあいとした雰囲気の中にも、真剣さが感じられる内容となっており、参加各氏が今後、RPAを推進・開発していくにあたっての大きな支えとなるに違いない。勉強会のますますの発展とRPA利用促進のために、当社としては今後もサポートに力を尽くしていきたい。