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WinActor TOP導入事例横浜市 | 保育園・幼稚園の給付認定・利用申請書処理にWinActorとAI-OCR「AI inside Cube」を導入「自治体業務システム標準化」に向けた意識変革進む

横浜市 | 保育園・幼稚園の給付認定・利用申請書処理にWinActorとAI-OCR「AI inside Cube」を導入「自治体業務システム標準化」に向けた意識変革進む

2021/03/26

公共

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横浜市こども青少年局 保育・教育運営課 認定・利用調整担当 RPAチームの皆さん 

 人口375万人以上を擁する日本最大の自治体、横浜市。その中にあって、保育所等の運営支援、保育の質の向上、多様な保育の推進などを手がけているのが、こども青少年局保育・教育運営課です。同課の認定・利用調整担当では、保育園・幼稚園の利用希望者から寄せられる年30,000件以上の申請書類の処理に、RPAソリューションWinActorと、AI-OCRを実現するエッジコンピュータ「Ai inside Cube」を導入、効率化に向けた取り組みをスタートさせました。この取り組みは、時短効果以外に「意識変革」という成果もあったようです。

導入業務

・保育園・幼稚園の給付認定申請書、利用申請書(手書き)をデジタル化
・デジタル化された申請内容のシステム入力、受付簿作成などを自動化
 ※いずれも実証実験として実施

ポイント

・受付簿作成業務で、月500時間の残業を削減
・導入の経験を通して業務デジタル化の勘所をつかみ、今後のシステム標準化に活かす

ピーク時には100人もの動員が必要な申請書の処理業務

横浜市 こども青少年局 保育・教育運営課認定・利用調整担当 係長 岡崎 有希氏

 少子化が進む一方、保育園や幼稚園に子供を預けたいという保護者は増えていると、こども青少年局保育・教育運営課認定・利用調整担当係長の岡崎有希氏は言います。
「女性の社会進出を促進する施策や幼児教育・保育の無償化によって、お子さんを預けやすい環境が整ってきたため、保育園・幼稚園のニーズが高まってきました。これからますます増えるであろう申請に対処するには事務の効率化が重要だと考え、ツールの導入を決めました」
申請書類は給付認定申請書、保護者の就労証明書、そして保育園・幼稚園の利用申請書など、子供一人に対して最低4枚あり、通常は市内18区役所に設けられた こども家庭支援課の担当者が、郵送で届いた書類の整理、審査、業務システムへの入力などを行っています。

 しかし4月入所については、申請のほとんどは、10月下旬から11月下旬に集中して届くので、こども青少年局保育・教育運営課が主導して事務処理集中センターを設置。20人程の局職員、区の担当者に加え、派遣スタッフ80名以上を動員して処理にあたる必要がありました。また申請書類の受付簿を作成するために局職員が長時間、残業しなければならず、人的負荷、コスト面での課題につながっていました。

事務処理集中センター

「このままではパンクする。機械に任せられることは機械に任せよう」

2019年、当時の課長の一声で、自動化に向けての検討が始まりました。
プロポーザルの結果、NTTデータが今回のRPA導入実証実験のパートナーに選ばれました。

コスト抑制と安全性向上のため、AI inside Cubeを採用

 申請書を読み取るOCRには、精度とセキュリティを考慮し、LGWAN(地方自治体向け閉域ネットワーク)上に読み取りエンジンを構築できる「NaNaTsu® AI-OCR with DX Suite」(以下、DX Suite/開発:AI inside社) を採用することにしました。これにRPAソリューションWinActorを連携させ、スキャンした申請書データのアップロード、DX Suiteでテキスト変換したデータのダウンロード、業務システムへの入力、受付簿の作成などの作業を自動化するという計画です。

 DX Suiteの設定やWinActorのシナリオ作成などはNTTデータが担当し、2020年半ばに数百件のダミーデータで実証実験を行いました。

横浜市で実施されたWinActor研修の様子

「文字の読み取りは期待していた以上の精度でしたし、これまで1件30分以上かけていた作業を、WinActorが数分で終わらせたのを見た時は感動しました」と、担当の竹森庸陽氏は言います。
実験そのものは成功でした。しかしここで再びコスト面での課題が浮上してきます。

「DX Suiteは従量課金制で、読み取り件数に対してコストがかかる仕組みです。今回の業務では、一人分の申請書だけでも読み取り項目が600以上もあります。それが申請人数分となれば、膨大な費用がかかることになってしまうのです」(竹森氏)

 この課題を解決するソリューションとなったのが、「AI inside Cube」(以下Cube)でした。これは「DX Suite」をインストールしたサーバを物理的にレンタルするサービスで、料金が読み取り件数に左右されることがありません。ユーザーのLAN内に設置すれば、インターネットに接続することなく、より安全にAI-OCRの機能を利用できるようになります。

残業500時間削減、住民サービスの向上にも効果

 2020年10月、申請のピークを前にできあがったのが、図のフローです。

「令和2(2020)年度は修正を重ねながら実験的に使っていたため、すべて図の流れ通りに進められたというわけではありません。保育園の申請処理は複雑な条件分岐があるので、人が判断した方が速いところは従来通り人が行うなど、人と機械の役割を分けて対処しました。ただ受付簿の作成業務については完全にWinActorに任せることができたので、のべ500時間分の残業を削減することができました」(岡崎氏)

 また市民からの問い合わせに、スピーディに対応できるようになったという効果もありました。従来は申請書を提出した市民から区役所の窓口に問い合わせが入った場合、4月入所については区の担当者が事務処理集中センターで原本を探して内容を確認し、市民に折り返し電話して回答するという手順が踏まれていました。しかし申請書をAI-OCRで電子化し、ファイルサーバに保管するようにしたことで、区役所にいても申請内容を確認できるようになったのです。市民を待たせずに回答ができると、区役所からは好評だったといいます。

生みの苦しみが、デジタル化対応の経験値を上げる

横浜市 こども青少年局 保育・教育運営課認定・利用調整担当 担当 竹森 庸陽氏

 RPAやAI-OCRをここまで大規模に利用した例は横浜市役所内でも殆どなかったため、稼働までには生みの苦しみを経験することになったと、竹森氏は語ります。
「例えば『RPAの作業に間違いがあった場合、誰がその責任を負うのか』『RPAに作業させるにあたり、アカウントを発行していいものなのか』という内部統制のハードルを乗り越えなければなりませんでしたし、開発業者と本市側の認識のズレから、何度も手戻りが発生してしまいました。これまで担当職員間の阿吽の呼吸で進められていたことでも、外部の人に発注する際には、詳細まできちんと言葉にしなければならないと、気づかされました」

 この気づきが得られたことは、大きな成果だったといいます。

「政府から、自治体情報システムの標準化を令和7(2025)年度末までに行うという方針が出ましたが、その実現に向けて何に留意すべきなのか、今回のテクノロジー導入で前もって経験できたことは大きかったですね」(岡崎氏)
「この経験がなければ、標準化という大きな変化を前に『どうしよう』で終わっていたかもしれません。機械に頼った方がいいこと、人が判断すべきことを区別して業務プロセスを見直した方がいいとか、運用にあたってのルールづくりが必要だとか、発注時には言葉による明確な意思伝達が重要だとか、デジタル化に向けた考え方の基盤をつくることができました。そういう意味で、この1年は貴重だったと思います」(竹森氏)

横浜市 市庁舎

 これから5年の間に乗り越えねばならない「システムの標準化」という壁に対処していく心構えができたと語るお二人。今、すべての自治体に、こうした意識変革が求められていると言えそうです。

「民間企業の場合は、デジタル化の流れに追随しないと振り落とされてしまうかもしれませんが、行政は手順や書式がカチッと決まっていて、なかなか変わるきっかけがありません。これから始まるシステム標準化に臨むには、一人ひとりの職員が業務に対する考え方をデジタル化に切り替えることが重要になってくるでしょう」(竹森氏)

 

※課名、補職は令和2年度(2020年度)のものです。

 

横浜市役所 概要

地方公共団体名

横浜市役所

市役所所在地

神奈川県横浜市中区本町6丁目50番地の10

人口

3,757,225人(令和3年2月末)

ウェブサイト

https://www.city.yokohama.lg.jp/

関連サービス
スマート自治体プラットフォームNaNaTsu:https://cobotpia.com/nanatsu/

(2021年3月現在)

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